第4回勉強会
(麺用小麦粉のブラインドテスト)


登場名はすべて順不同、敬称略。
メーカーさん、問屋さんのご協力により、意義深い勉強会ができました。
協力・協賛の方々、厚く御礼申し上げます。

 ■実施日:2003年6月28日(土)
 ■会場:角丸
 ■協賛:椛蜑ヘ内 名古屋市名東区香南2-809 052-773-3288
 ■テーマ:麺用小麦粉のブラインドテスト
 ■試食銘柄:
 かもめ、金トビ(以上金トビ志賀)、麺維新、手打御膳、麺の鄙歌、白椿(以上日清製粉)
 ■方法:
 @) 予め小麦粉はうどんに打っておく。今回は6分強で茹であがる細目のうどんにしました。
    加水・ボーメは全種類45%、18度で用意する、全種類全工程手打。
 A) すべてほぼ同時刻にあがるように計算して茹でる。
    最初と最後では6分くらいの差が出ますが、その差は無視します。
 B) ABC…プラコップに少量ずつ麺を入れて全員に配布。水で締めた状態で試食。
    つゆは特別用意せず、必要な方は各自用意するスタイル。
 C) 車座で試食しながら意見交換、討論。
 D) アンケートは挙手でとる。
 E) ABC…がどの粉か発表。
 F) もう一度、改めて全種類試食しながら意見交換、討論。
 ■参加者:16名(東麺類青年会より10名、手打研究会より6名)
 ■打ち手インプレッション:
   あくまで、打ち手の個人的感想です。ご参考までに。(文責:打ち手・角丸 日比野宏紀)

    すべての銘柄を、加水45%、ボーメ18度で水回ししました。
    6月27日水回し、28日打ち。
    全工程完全手打。
    大雑把な言い方をすると、
    「白椿」「麺維新」はでんぷん質のグループで、名古屋式手打には合いづらい。
    「手打御膳」「かもめ」は名古屋式によく合う。
    「金トビ」は上二つより、ざらりとした粉で力強い。
    「麺ノ鄙歌」は異色。

はまが締まる

はまがだれる

細かい

 


 

滑らか



 

力強い

白椿

 

粒子が細かい感じ。水回しでぱらぱらになる。
締まってくる。寝かしが短いとつらい感じ。
本来、加水はもう少し多めにするか、ボーメを下げるべき粉。

麺維新

粗蛋白7.0%
灰分0.33%

特殊な手触り。片栗やコーンスターチを触った感触に似ている?
酢の匂いがする。ぽきぽき・ばらばらした感じ。
踏むと紙粘土のよう。のしの段階でも割れてくる。
これも加水を増やすか、ボーメを下げる必要あり。

手打御膳

粗蛋白8.2%
灰分0.33%

加水量・ボーメともいい感じ。
かもめに似ている。かもめより、やや肌目細かいか?

かもめ

粗蛋白8.0%
灰分0.34%

加水・ボーメともに適正。いつもどおり、可もなく不可もなく。

金トビ

粗蛋白8.5%
灰分0.37%

ざらざらと粗い感触。ごつごつ感。
しっとりする。作業はしやすい。
加水・ボーメとも許容範囲だが、もう少し加水を下げてもいいだろう。

麺ノ鄙歌

粗蛋白10.0%
灰分0.55%

加水はもっともっと少なくてよい。
黒砂糖のような独特の匂い。団子になる、柔らかくだれる。
麩が入った感じ。

 ■アンケート結果:
  打ち手は麺に1番から6番までの番号をふり、
  それを茹で手がシャッフルしてAからFまでの記号を振りなおして茹でた。
  これにより、全員がまったくのブラインド状態で試食できる。

質問@ 冷たいメニューにしたとき、
     どの麺が一番美味しく感じましたか?

かもめ 手打御膳 麺維新 金トビ 麺ノ鄙歌 白椿
0 3 7 6 0 0

質問A 種物やかけにしたとき、
     どの麺が一番美味しいと思いますか?

かもめ 手打御膳 麺維新 金トビ 麺ノ鄙歌 白椿
0 2 0 8 0 6

試食した感想として、
Aかもめ…塩が抜けていない、など
      (同じ太さで同じ茹で時間だが、かもめは塩が抜けにくいのかも知れない)
B手打御膳…つるつる感がすごい、滑らか、など
C麺維新…非常に滑らか、コシに欠ける、など
D金トビ…コシがある、味がある、など
E麺ノ鄙歌…ちょっと苦手な人が多かった。
        コシや味はあるが匂いが苦手、など
        「国産小麦100%」「健康によい」「黒うどん」などのように
        能書きをつけないと文句を言われそうという意見もあり。
F白椿…(これを志賀製粉の粉と思った人が多かった)
     コシがある、味がある、など 

質問B かもめを店で使っている人に訊きます。
     かもめはどれでしょう?

かもめ 手打御膳 麺維新 金トビ 麺ノ鄙歌 白椿
5 0 4 2 0 0

質問C 金トビを店で使っている人に訊きます。
     金トビはどれでしょう?

かもめ 手打御膳 麺維新 金トビ 麺ノ鄙歌 白椿
0 0 0 5 0 9

質問D あなたのお店でのうどんの茹で時間は何分ですか?

 茹で時間は、麺の太さの他に、ボーメや加水の影響を受けるし、手打か機械打ちかによっても異なる。
 一般に手打うどんは機械打ちに比べて茹だりが早い。

質問E あなたのお店でのきしめんの茹で時間は何分ですか?
     (冷たいメニューの場合)

質問F あなたのお店では、6月28日現在、
     何ボーメの塩水を使っていますか?

 名古屋は他地域と比べて、高ボーメの塩水を使う傾向がある。
 元からの地粉の性質に加え、高温多湿の気候も影響していると考えられる。
 また、一般に手打は機械打ちよりも高ボーメを使う場合が多い。
 グラフの山がふた山に別れたのは、その(手打と機械打ちの)差を如実に表している。

質問G あなたのお店では、
     うどん用小麦粉をブレンドしていますか?

ブレンド例としては…
・金トビ 1:1 地粉(日東・白鷺など)
・金トビ 1:2 かもめ
・亀城庵(昭和産業) 2:1 かもめ

 ■総評:

今回は前回の反省を踏まえ、すべて茹で上げてから全員着席し、
意見交換しながら試食するスタイルを採用しました。
結果的にそれが成功し、
活発な意見交換が行われ、有意義な勉強会になりました。

小麦粉の評価などへのコメントは割愛しますが、
今回のテストは、名古屋式手打技術により行われたことは頭においていただきたいと思います。
同じ名古屋の店でも、機械打ちの店が、このデータを鵜呑みにするのは危険です。
ましてや、塩度が大きく違う他地域では、180度違った結果が出たかもしれません。
今回参加していただいた各店は、このテストをきっかけに、
各店でよりパーソナルなテストや勉強をしていただければ、と思います。

一つ言えることは、
名古屋の麺の打ち方は、この地方の粉の特色を抜きにしては語れないということです。
今回テストした粉の中には、明らかに名古屋式が合わない粉もありました。
そういったことを踏まえて、讃岐の技法、稲庭の技法、水沢の技法、もちろん名古屋の技法を、
考えていく必要があると痛感しました。
讃岐の技法を勉強するなら、讃岐の粉を手に入れないとダメだ、ということです。

いずれ機会があれば、讃岐の「もち性小麦」を入手して、いろいろな打ち方を比較してみたいと思います。

協賛していただいた大河内さん、参加し、いろいろな意見を下さった皆様、このページをお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。